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支援室紹介

NanoSight Pro(ナノサイトプロ)で洗浄瓶のナノパーティクルを測ってみよう!(科学研究基盤技術支援室)

注意:本記事に紹介されているNanoSight Proの使用方法はメーカーの想定されている使用方法とは違う可能性があります。

 

最近話題のマイクロプラスチック・ナノプラスチックって?

最近、ニュースなどでマイクロプラスチックという言葉を耳にすることが増えましたね。これは、5ミリメートル以下の小さなプラスチックごみのことです。海や土壌、さらには生物の体内からも見つかっており、地球環境や私たち人間の健康に与える影響が心配されています。

さらに、このマイクロプラスチックよりももっと小さな、1マイクロメートル(1ミリメートルの1000分の1)以下の粒子はナノプラスチックと呼ばれています。あまりにも小さいため、私たちの目には見えませんが、私たちが普段使っているプラスチック製品からも発生しているのではないかと注目が集まっています。

見えないナノ粒子を測るNanoSight Pro

目に見えないナノプラスチックをどうやって測定するのでしょうか?

 

今回使用するのは、科学研究基盤センターの機器分析分野に2024年に導入されましたMalvern Panalytical社製のNanoSight Pro(ナノサイトプロ)という粒子計測装置です。

この装置は、液体の中に漂うナノメートル(10億分の1メートル)レベルの微粒子レーザー光を当てて、その動きを解析することで、粒子のサイズや濃度を測ることができます。

 

詳細はこちら →https://www.malvernpanalytical.com/jp/products/product-range/nanosight-range/nanosight-pro

普段使いの洗浄瓶をチェック!

私たちは研究や実験で、水や薬品を入れるための洗浄瓶をよく使います。これは多くが樹脂(プラスチック)製です。今回は、この樹脂製の洗浄瓶が、どれくらいのナノパーティクル(ナノ粒子)を発生させているのかを調べてみました。実験には、実験室にあった5つの洗浄瓶を用意し、それぞれをボトル1からボトル5としました。

図1 今回測定に使用した洗浄瓶(ボトル1~5)

実験方法

1            比較対象の測定: 粒子が発生しないかを確認するため、まずはガラス製のビーカーに超純水を入れ、NanoSight Proで測定しました。

2            初期状態の測定: 次に、5つの洗浄瓶それぞれに超純水を入れ振って捨てる洗浄作業を3回行った後、超純水を入れました。側面を押さずにそのままの状態で測定しました。(表の「静置」)

3            使用後の測定: その後、洗浄瓶を通常使用する時と同じような側面を押して水を出す動作を100回繰り返しました。これは、洗浄瓶の側面に物理的なストレスを受けた状態を再現するためです。100回押し終わった後、洗浄瓶の中の水を撹拌して測定しました。(表の「100回押した後」)

驚きの結果!ボトル2から大量のナノ粒子が!

測定の結果がこちらの表です。

表1 測定結果
※N.D.はNot Detected(検出されず)の意味
※NanoSight Proの測定範囲は106~109 [particles/ml]
※表の順番に測定し最初と最後にガラスビーカーを測定

 

ガラスビーカー

期待通り、ガラス容器に入れた超純水から粒子は全く検出されませんでした。

樹脂製洗浄瓶(ボトル15

静置状態では粒子が検出されるものとされないものがありました。検出されたボトル2~4の結果は<106となっていますがNanoSight Proの測定範囲が106109 [particles/ml]のためで数値で計測することができませんが、体感的には少ないように思われました。「100回押した後」は、ボトル1を除く全てのボトルから含まれている粒子数が増加しました!

特にボトル2は、他のボトルと比べて最も多い、1ミリリットルあたり約3,860万個もの粒子が観測されました。

 

ボトル2で得られたパーティクルサイズの分布図は図2のようになっています。縦軸は粒子濃度、横軸は粒子サイズ(nm)。このグラフから、観測された粒子の多くが数十〜数百ナノメートル(nm)の非常に小さな領域にあることが分かります。

図2 ボトル2の粒子サイズ分布

まとめ:樹脂ボトルからナノプラスチックが発生した可能性

今回の実験から、以下のことが示唆されました。

  1. ガラスビーカーからはナノ粒子は発生しない。
  2. 樹脂製の洗浄瓶は、使用時(ボトルを押す動作)によってナノ粒子を発生させている。
  3. 発生した粒子のサイズは数十〜数百ナノメートル領域であり、ナノプラスチックである可能性が高い。(当センターに顕微IRやラマン装置がないためナノプラスチックであるかどうか分析が困難です)

普段何気なく使っている洗浄瓶は、物理的なストレス(押す動作)を受けることで、目に見えないほど小さなナノプラスチックを発生させている可能性がある、ということが分かりました。今回の実験結果を踏まえ、長年使用して劣化している洗浄瓶は使用用途によっては交換していく必要があるでしょう。

 

注意:NanoSight Proの使用方法は粒子数106109 [particles/ml]に調整して測定する事で粒子サイズ、濃度を測定する装置であり記事のような使用方法は本来の用途とは違います。

 

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